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宮木 あや子『花宵道中』
- 花宵道中
- 宮木 あや子(著)
- 新潮社 (2009/8/28)
今年文庫化されたR18大賞作品。読者の性別関係なしに評判がいいみたいで。いわゆる本読みの人たちにうけいれられる感じの官能なのでしょうね。江戸の吉原を舞台とした遊女たちの恋物語。
R18という記号から想像していた作品とは、まったく違っていました。もっとえろえろな作品だと思ってたんです。作品全体に上品な官能的雰囲気がただよっていて、遊女ひとりひとりの事情、気性、感情、なども読み応えがありました。
とてもよい小説だと思いますけど、R18っぽくないんですよね。この作品は好きです、でも正直いって、もっとお下劣なものが読みたかったです。
角田 光代『トリップ』
- トリップ
- 角田 光代(著)
- 光文社 (2007/2/8)
タイトルの『トリップ』は、麻薬の幻覚症状だったり、日常の妄想だったり、旅だったりします。とある町に暮らす人々の、小さなトリップ話を集めた連作集。怖い話じゃないはずなのに、めちゃくちゃ怖かった。近所の肉屋で毎日コロッケを揚げている中年女性の記憶や、旅に出たきりお世話になった祖母のお葬式にも帰ってこない娘の心理とか、見たくないものを見てしまった気分です。
ドン・ウィンズロウ『犬の力』
- 犬の力
- ドン・ウィンズロウ(著)
- 角川書店(2009/8/25)
この作品は、ドン・ウィンズロウの別の一面なのかもしれません。今までのセンチメタルで優雅な雰囲気が隠れてしまっています。眉をしかめて、歯を食いしばって読むような、きびしい話でした。
冷戦時代からの30年間に及ぶ、中央アメリカを中心とした麻薬戦争を描いた物語。史実をベースに物語要素をふくらませた感じだと思います。アメリカの捜査官やメキシコの麻薬カルテル一家など、様々な立場の人々が描かれていますが、ほぼ皆幸せにならない。誰もが裏切りと騙し合いで、自分も周りもズタボロにしていきます。…犬の力で。(犬の力って解説を読んでも理解できないです)
読み始めは一昔前のスパイ小説みたいでとまどっていたのですが、途中からやめられなくなりました。怒涛の迫力に巻き込まれてしまいました。
ロバート・チャールズ ウィルスン『時間封鎖』
- 時間封鎖
- ロバート・チャールズ ウィルスン(著)
- 東京創元社 (2008/10)
タイトルと表紙の雰囲気で、コテコテのハードSFだと思い込んでたのですが、ぜんぜん違っていました。一般小説に近い感じです。時間が封鎖された地球。その終末世界での、幼馴染三人の友情あり恋愛ありの成長物語のようでした。すらすら読めて、単純におもしろかったです。ただ、時間が封鎖された理由が、なんだか安易というか、納得いかないです。それ以外がおもしろかったので、その辺はどーでもいいんですが。
リチャード・パワーズ『われらが歌う時』
- われらが歌う時
- リチャード・パワーズ (著)
- 新潮社 (2008/7/30)
子供のころから様々な本を読んできて、たまに”わたしの理想の小説”とはどんなものかを考えることがありました。それは『ライ麦畑でつかまえて』の延長にあったり、『魔の山』だったり、『はてしない物語』のようであったりします。この作品『われらが歌う時』は、わたしの理想に近く、想像を超えた小説かもしれません。
舞台は20世紀アメリカ。亡命ユダヤ人の物理学者と黒人音楽学生が奇跡的な恋に落ち、白と黒の混血の子供たちが生まれた。激しい人種差別のなか、この家にはいつも音楽が満ちていた。時間の秘密に包まれていた。やがて家族は崩壊し、世界に暴力と音楽が広がっていく。そして過去と未来の時は加速し、現在に到達する。
パワーズに関する書評や記事には、よく「共鳴」という言葉が使われています。わたしはこの作品を読んでいる時、嘘っぽいけど、あたまのなかに小さな空間ができて、どんどん広がっていく気分を感じました。まったく小説の力は無限ですね。




