リチャード・パワーズ『われらが歌う時』


子供のころから様々な本を読んできて、たまに”わたしの理想の小説”とはどんなものかを考えることがありました。それは『ライ麦畑でつかまえて』の延長にあったり、『魔の山』だったり、『はてしない物語』のようであったりします。この作品『われらが歌う時』は、わたしの理想に近く、想像を超えた小説かもしれません。

舞台は20世紀アメリカ。亡命ユダヤ人の物理学者と黒人音楽学生が奇跡的な恋に落ち、白と黒の混血の子供たちが生まれた。激しい人種差別のなか、この家にはいつも音楽が満ちていた。時間の秘密に包まれていた。やがて家族は崩壊し、世界に暴力と音楽が広がっていく。そして過去と未来の時は加速し、現在に到達する。

パワーズに関する書評や記事には、よく「共鳴」という言葉が使われています。わたしはこの作品を読んでいる時、嘘っぽいけど、あたまのなかに小さな空間ができて、どんどん広がっていく気分を感じました。まったく小説の力は無限ですね。

2009年9月22日

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